コンテンツにスキップ

ヒドロキシプロゲステロン (注射用黄体ホルモン)

孕激素 C

ヒドロキシプロゲステロン (OHPC / Proluton等)

Hydroxyprogesterone Caproate (OHPC)

筋肉注射 (IM)

カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン(OHPC:一般にプロルトン等の名前で知られます)は、体内に長期間とどまる「注射用」のプロゲスチン(黄体ホルモン)です。長い半減期を誇るものの、現代のトランスジェンダー医療においては信じられないほどマイナーであり、事実上ほとんど使われていません。トランス女性におけるその安全性や有効性に関する臨床研究は「文字通り皆無」です。もしあなたが黄体ホルモンの追加を望むなら、これを打つくらいなら「天然型の経口(飲み薬)微粉化プロゲステロン」を選択する方が無限に優れています。


カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン(OHPC)は、天然の 17α-ヒドロキシプロゲステロンを人工的に合成変更した誘導体であり、分類としては「半合成のプロゲスチン」に入ります [1]

主な特徴:

  • 投与方法: 筋肉注射 (IM) でのみ投与されます。これを飲み薬として経口摂取することはできません。
  • 半減期: 深い筋肉内に打ち込まれると、1回につき約7〜8日間もの間、薬を放出し続けるデポ(貯留)効果を生み出します。
  • 作用機序: 体内のプロゲステロン受容体 (PR) に結合し、標準的な黄体ホルモンとしての活動を模倣します。
  • 代謝: 肝臓で重度に分解され、腎臓を通じて排泄されます。
  • グローバル市場でのブランド: かつては Makena(早産予防薬として有名でしたが、効果がないとして2023年に米国市場から完全撤退)や、日本の個人輸入界隈でもたまに見かける Proluton Depot(プロルトン・デポー)などの名前で知られています。

天然型のプロゲステロン(飲み薬)との違い

Section titled “天然型のプロゲステロン(飲み薬)との違い”
特徴微粉化プロゲステロン (ウトロゲスタン等)ヒドロキシプロゲステロン (OHPC/注射)
化学的な起源 人間の天然のP4と完全に同一 (バイオ) 半合成のプロゲスチン誘導体
投与ルート 経口 (ソフトカプセル飲み薬) 深い筋肉への注射
頻度 毎日 1〜2週間に1回
鎮静・睡眠作用 あり (GABA受容体を強烈に叩く) 基本的になし
トランス医療の実績 限られているものの、幅広く使用実績あり データは文字通り「皆無」
苦痛・耐容性 ほとんど苦痛なし(寝るだけ) 注射部位の猛烈な張り、しこり、痛み

GAHT (トランス医療) における OHPC の現実

Section titled “GAHT (トランス医療) における OHPC の現実”

OHPC は、トランスジェンダー医療の主流における「幽霊」です。絶対的な巨大権威である Endocrine Society 2017 ガイドライン [2] および WPATH SOC 8 [3] において、性別適合ケアのレジメンから OHPC は**完全に無視(スルー)**されています。

では、なぜわざわざこれを好んで使う人がいるのでしょうか?

  • オーラル(飲み薬)のプロゲステロンを飲むと、胃腸が耐えられないほどの吐き気や不快感を引き起こす体質だから。
  • 毎日欠かさず薬を飲み込むよりも、「週に1回」注射してあとは忘れていたい、という強烈な怠惰の欲求があるから。
  • (一部の国で)天然のプロゲステロンが手に入らないが、プロルトンデポーの注射だけが違法なグレーマーケットで異様に安く出回っているから。

もしこれをトランス女性が打った場合、機能的には標準的なプロゲストーゲンとして働きます:

  • 理論上は、小葉肺胞の成熟(タナーステージ IV〜V)を早め、胸を丸くする手助けをする可能性があります。ただし、トランス女性においてこれを証明する臨床実験は地球上に1つも存在しません。
  • 間接的に、HPG軸を抑制する(脳から精巣の指令を切る)のを助け、テストステロンをマイルドに抑え込むのをサポートします。
  • 飲み薬のプロゲステロンが圧倒的な人気を誇る理由である「抗不安作用」や「強烈な睡眠導入作用(不眠症の特効薬)」は、この注射剤には存在しません

投与量のフレームワーク(用量)

Section titled “投与量のフレームワーク(用量)”
プロトコル用量投与方法備考
産婦人科の標準用量 週 250 mg 筋肉注射 本来はシスジェンダー女性の「流産防止」のためにデザインされた量です。
DIY 界隈の実験的用量 1〜2週間に 125〜250 mg 筋肉注射 完全にネット上のDIYユーザーの自己報告から抽出された数値です。

  • 注射部位のひどいダメージ: OHPC は注射するために、非常に「ドロドロで粘度の高い」キャリアオイル(ひまし油など)に溶かされています。そのため、打った場所(お尻や太もも)にひどいアザができ、数週間も消えない「硬いしこり(硬結)」が発生し、深い筋肉の痛みに何日も苦しめられることはほぼ確実です。
  • 吐き気やめまい
  • 感情の暴走(メンタルクラッシュ): すべてのプロゲストーゲンと同様に、理由のない重度な抑うつエピソードや、PMS(月経前症候群)のような感情の崩壊を引き起こす可能性があります。
  • アナフィラキシー(アレルギー): 濃厚なキャリアオイル成分そのものに対する、重度の免疫アレルギー反応が報告されています。

  • アメリカ: 事実上の「死亡」状態です。歴史的に有名だったOHPCの王者ブランド「Makena」は、「そもそも早産の防止に全く効いていない」という事実が発覚し、2023年にFDAによって米国市場から完全に強制退場させられました。
  • 日本のDIY界隈・グレーマーケット: 一方日本では、タイなどの規制が緩い市場から「プロルトン・デポー (Proluton Depot)」のジェネリック注射液が安価で流れてきており、オオサカ堂などの個人輸入サイトを通じて一部のDIYユーザーが好んで購入しています。しかし、その「製剤の純度」や無菌性が本当に保障されているかを確認する手段はありません。

参考文献

  1. Kuhl H. Pharmacology of estrogens and progestogens: influence of different routes of administration. Climacteric 2005;8(Suppl 1):3-63. DOI:10.1080/13697130500148875
  2. Hembree WC et al. Endocrine Treatment of Gender-Dysphoric/Gender-Incongruent Persons. J Clin Endocrinol Metab 2017;102(11):3869-3903. DOI:10.1210/jc.2017-01658
  3. Coleman E et al. Standards of Care for the Health of Transgender and Gender Diverse People, Version 8. Int J Transgend Health 2022;23(S1):S1-S259. DOI:10.1080/26895269.2022.2100644